以前に「噛み締め癖から顎関節症に」というコラムを挙げましたが、この噛み締め・食いしばりが自律神経の乱れや腰痛などにも関係してくることがあります。
前回はセルフケアを挙げましたが、今回はさらに掘り下げて、食いしばりの癖を日常から改善する「ミューイング」という方法をお伝えしたいと思います。
以前のコラムも見ていただけると理解が深まりますよ↓
https://ide-seikotsuin.com/kamishime
自律神経や腰痛など身体全体に影響する、食いしばり
「歯の食いしばりが自律神経や腰痛とも関係している」と聞くと、意外に思われるかもしれません。
あごを噛みしめると、側頭筋・咬筋・胸鎖乳突筋といった頭部・首まわりの筋肉が緊張します。その緊張は首から肩へ、肩から背中へ、そして腰へと連鎖的に波及します。
どこかに負荷がかかると、その部分の負荷を分散しようと他の場所がカバーするということと、筋膜というのは体全体を包む一枚の膜のようなもので、どこか一部が緊張を起こすと、その張力は遠く離れた場所にまで伝わっていきます。
つまり、慢性的な食いしばりは、首、肩、背中、腰の筋肉を常に緊張させる遠因になりうるのです。
・腰痛が続いているのに、はっきりした原因が見つからない
・朝起きたときから腰が重い・だるい
・首、肩こりと腰痛が同時に慢性化している
こうした方は、あごの緊張が体全体に波及しているかもしれません。
そして自律神経の乱れや腰痛がある方はストレスから、無意識に食いしばるクセと同時に歯と歯が接触するTCH(Tooth Contacting Habit 上下歯列接触癖)になっている方も多くいます。
TCHとは?——知らないうちにやっている「歯の接触グセ」
以前のコラムにも詳しく書きましたが
上下の歯は、食事や会話のとき以外は触れていないのが正常な状態です。安静時、歯と歯の間には1〜3mmほどの隙間があるのが自然です。
ところが多くの方が、仕事中・スマホ操作中・家事の最中など、無意識のうちに上下の歯を触れさせ続けています。これをTCH(Tooth Contacting Habit 上下歯列接触癖) といいます。
軽く触れているだけでも、あごの筋肉には断続的な負荷がかかり続けます。それが積み重なると首、肩、背中、腰へと波及して
・顎関節の慢性的な緊張・痛み
・頭痛・首こり・肩こり
・呼吸が浅くなる
・腰まわりの慢性的なだるさ・痛み
といった症状につながっていきます。
この癖を日常から改善するミューイングという方法をお伝えします。
ミューイングとは?
「舌全体を上あごに正しくつける」という口腔姿勢のトレーニングです。イギリスの歯科矯正医ジョン・ミュー博士が提唱し、近年は広く知られるようになってきました。
舌は口の中で一番大きな筋肉です。舌が正しい位置にあると、あごまわりの無駄な緊張がほぐれ、頭・首・肩のバランスが整いやすくなります。
整体的な視点では、舌の位置=頭の位置。頭の位置が変わると、首・肩・背骨全体のバランスにも影響します。
舌が下がったままだと気道も塞がれやすく呼吸が浅くなり、頭が前に突き出す「ストレートネック」につながり、首・肩・腰への負担がさらに増してしまいます。
ミューイングのやり方——3つのポイント
POINT 01|舌を上あごに貼りつける 舌先を上の前歯の根元に当て、舌全体を上あごに吸いつけます。「舌で上あごを押し上げるように」というイメージが近いです。
POINT 02|歯は「触れない」が正解 、上下の歯はそっと離しておきます。「噛みしめない・触れさせない」を意識することが、あごから全身の緊張をゆるめる第一歩です。
POINT 03|鼻で呼吸する 舌が正しい位置にあると、自然と鼻呼吸になります。口呼吸から鼻呼吸への切り替えが、自律神経を整えるうえでとても大切です。

ミューイングがTCHを改善する流れ
STEP 01|舌を上あごに正しく置く
舌全体を上あごに吸いつけることで、あごが自然と「閉じすぎない」ポジションに落ち着きます。
舌がスペーサーのような役割を果たし、上下の歯が接触しにくい状態をつくります。
STEP 02|歯が自然と離れる
舌が正しい位置にあると、奥歯を噛みしめようとしても物理的に力が入りにくくなります。
「意識して歯を離す」のではなく、舌の位置が正しければ歯は自然と離れるようになります。
STEP 03|あごまわりの緊張がゆるむ。
TCHによって緊張していた側頭筋・咬筋・翼突筋などがゆるみ始めます。あごの力が抜けると、首・肩まわりの筋肉も連動してリラックスしやすくなります。
STEP 04|頭の位置が整い、首・肩・腰への連鎖が変わる
舌の位置が正しくなると頭が体の真上に乗りやすくなります。
頭の重さ(約5〜6kg)が首・背骨・腰に均等に分散されることで、全身の負担が減ります。食いしばりから来ていた腰への緊張連鎖も、少しずつほぐれていきます。
STEP 05|鼻呼吸が定着し、自律神経が整いやすくなります。
舌が上あごにつくと口が閉じ、気道が通りやすくなり、自然と鼻呼吸になります。鼻呼吸は副交感神経(休息回復モード)を働かせやすく、首・肩まわりの緊張をゆるめることにつながっていきます。
TCHに気づくためのサイン
・パソコン作業、運転中、家事、勉強中など
気づくと歯を食いしばっている、もしく上の歯と下の歯が当たっている
・緊張やストレスを感じると、食いしばったりあごに力が入る
このような時に
対策はシンプルで、「あ、噛んでた」「歯と歯が当たってた」と気づいたら、そっと歯を離してミューイングの姿勢に戻す—これだけです。付箋に「歯を離す・舌を上あごに」と書いてパソコンや冷蔵庫に貼っておくだけでも、意識が変わります。
日常への取り入れ方
スマホを見るとき
下を向くと舌が自然と下がりやすくなります。画面を少し持ち上げ、舌を上あごにつけることを意識してみましょう。
パソコン作業中
1時間に1回「舌の位置・歯の状態どうだっけ?」と確認するクセをつけるだけで変わってきます。
運転中・電車の中 信号待ちや乗車中など「ちょっと待つ時間」が絶好のタイミングです。舌を上あごにつけて、歯をそっと離し、鼻からゆっくり深呼吸してみましょう。
入浴中 体がリラックスしているお風呂の時間は、首まわりの緊張もほぐれやすい状態です。湯船につかりながら舌の位置を整え、深呼吸する習慣は自律神経を整えるうえでも効果的です。
寝る前 「舌を上あごに、歯は離して」と意識してから目を閉じるだけで、睡眠中の口呼吸や食いしばりを減らすきっかけになります。
ポイントは「力まないこと」。 最初は数秒でも意識できれば十分です。
どのくらいで効果が出るの?
1〜2週間|気づけるようになる 「あ、また噛んでた」「また舌が落ちてた」と気づける自分になる。
1〜2ヶ月|呼吸・首まわりの変化を感じ始める 鼻呼吸が楽になってきた、首こりが少し軽くなったなどの変化を感じやすい時期です。
3〜6ヶ月|姿勢・腰まわりの変化が出てくる 頭・あご・舌の位置が整ってくると、全身の筋緊張のパターンが変わり、慢性的な腰のだるさや肩こりが和らいでくる方もいます。
6ヶ月以上|体の土台として定着していく 舌の正しい位置・歯の離れた状態が「当たり前」になると、姿勢・呼吸・睡眠・腰痛など体全体の底上げにつながってきます。
大切なのは「続けること」より「忘れても戻ること」。 気づいたときに舌を上あごに戻し、歯をそっと離す——その繰り返しが習慣をつくります。
注意点
●力を入れすぎると逆効果になることがあります
ミューイングで最も多い「やりすぎ」のサインが、舌で上あごを強く押し上げようとすることです。力を込めて舌を押しつけると、舌骨まわりの筋肉・舌の付け根が緊張し、首や肩のこりがかえって強くなる場合があります。
ミューイングは「押しつける」のではなく、「そっと吸いつける」イメージが正解です。正しくできているときは、力みがなく、呼吸がスムーズに感じられます。やった後に首まわりが緊張する感じがあれば、一度完全に力を抜いてリセットし、やり直してみてください。
「ゆるく・軽く・自然に」——これがミューイングの大原則です。
ミューイングとTCHへの対策はセルフケアの一つです。顎関節の痛みや噛み合わせの問題が強く続く方は歯科医院などにも一度相談に行くのも必要です。
以上が
「自律神経や腰痛など身体全体に影響する、食いしばり」
についての説明でした。
その他気になることやわかりづらいことなどありましたら、来院時やLINEにてご質問下さいね。






