皆様から「ヘルニアは手術しないで治るんですか?」という質問をいただきました。
今日はそれにお答えしたいと思います。エビデンス(科学的根拠)の高い論文のURLも載せておきます。
それに加え、ヘルニア、腰痛を改善するのに共通する考えやエクササイズもお伝えします。
椎間板ヘルニアとは
腰のヘルニア(腰椎椎間板ヘルニア)で簡単に説明すると、
腰骨と腰骨の間にある、椎間板というクッションが飛び出て腰の神経を圧迫して痛みや痺れが出ることを言います。(頚椎椎間板ヘルニアも同じ原理になります)
詳しくは図をご覧ください。
椎間板ヘルニアが治る確率
ヘルニアは手術無しで治るのかということですが、
結論から言うと、少なくとも3人に2人は手術無しの治療で治ると言われています。
保存療法(手術しない治療)で腰椎ヘルニアが自然に吸収、縮小する確率は論文によりますが60%〜80%前後と言われています。頚椎ヘルニアはもっと高くなります。
エビデンスレベル最高グレードの論文もあり信頼できる内容になります。
- 論文タイトル: Incidence of Spontaneous Resorption of Lumbar Disc Herniation: A Meta-Analysis
- 著者・発行年・掲載誌: Zhong M, Liu JT, et al. / 2017年 / Pain Physician
- URL(DOI): https://www.painphysicianjournal.com/current/pdf?article=NDAwNA%3D%3D&journal=101 / PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28072796/
- 研究手法: メタアナリシス・システマティックレビュー(コホート研究11件を統合)
- エビデンスレベル: レベルⅠ〜Ⅱ(メタアナリシスのため最高位クラス。ただし原著がコホート研究のためRCTより一段階低く評価)
- 結論・要約: 手術をせず保存療法を選択した腰椎椎間板ヘルニア患者において、自然退縮の発生率は全体で66.66%(95%信頼区間51〜69%)という結果が示されました。「保存療法を第一選択とすることが支持される」と結論づけており、手術なしでも相当数の患者でヘルニアが消える可能性があることを統計的に示しています。 PubMed
- 論文タイトル: Prevalence, Clinical Predictors, and Mechanisms of Resorption in Lumbar Disc Herniation: A Systematic Review
- 著者・発行年・掲載誌: Xie L, Dong C, Fang H. / 2024年 / Orthopedic Reviews (Pavia)
- URL(DOI): https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39944739/ / https://orthopedicreviews.openmedicalpublishing.org/article/121399
- 研究手法: システマティックレビュー(PubMed・Embase・Cochrane、34件の論文を統合分析)
- エビデンスレベル: レベルⅠ(システマティックレビューとして最高位)
- 結論・要約: 保存療法中の椎間板ヘルニア自然退縮の発生率は76.6%(2199例中1684例)で、範囲は20〜96.2%。退縮は保存療法開始から6か月以内に多く起こり、後縦靭帯を突き破った脱出型(ルプチャード型)の方が退縮率が高いという結果が示されました。貪食作用の主なメカニズムとして、炎症反応・新生血管の形成・マクロファージの浸潤が明示されています。 PubMedOrthopedic Reviews
- 論文タイトル: The Incidence of Regression after the Non-Surgical Treatment of Symptomatic Lumbar Disc Herniation: A Systematic Review and Meta-Analysis
- 著者・発行年・掲載誌: Wang Y, Dai G, Jiang L, et al. / 2020年 / BMC Musculoskeletal Disorders 21(1):530
- URL(DOI): https://doi.org/10.1186/s12891-020-03548-z
- 研究手法: システマティックレビュー+メタアナリシス
- エビデンスレベル: レベルⅠ
- 結論・要約: 非手術治療を受けた症候性腰椎椎間板ヘルニア患者における退縮の発生率を統計的に検討。脱出・遊離型のヘルニアには積極的な保存療法が推奨され、早期治療・安静・コルセット装着が自然退縮を促進する可能性が示唆されました。臨床判断の指標として、発症後4か月・10.5か月時点でのフォローアップが推奨されています。 Semantic Scholar
ヘルニアが治る理由
なぜ、ヘルニアが消えるのかというと、身体の掃除細胞(マクロファージ)が飛び出したヘルニアを異物と判断して食べて処理してくれるからです。
これを貪食(どんしょく)作用といいます。

この働きを邪魔しないことが、改善への近道になります。
ようするに偏って椎間板に圧力(特に前側)をかけないということです。
・整体としては、偏った圧力を分散させる。
・圧力が分散できる、身体の使い方をする。
・圧力が一箇所にかかるような、間違ったエクササイズをしない。
ということになります。
①整体で圧力を分散させるのはわかると思います。
負担を減らすために、背骨から骨盤を中心に全身を整えることで負担を分散させます。
それにより、回復や貪食作用が早くなります。
逆に圧力がかかり続けている状態では、いつまでも貪食作用が起こらないということです。
②圧力がかからない身体の使い方に関しては、以前のコラムを参考にしてください↓
ポイントは体幹を固めて、強い関節の股関節を使うということです。
・負担を軽くする、日々の身体の使い方
https://ide-seikotsuin.com/karadanotukaikata
・腰を痛めない物の押し方、身体の使い方とは
https://ide-seikotsuin.com/itamenaioshikata
③の間違ったエクササイズですが、これも以前にお伝えしたことを踏まえてお伝えすると
腰というのはそもそもあまり動かないということです。
これは以前のコラム、
腰痛主に骨盤や股関節の動きを改善しなければいけない理由の中でお伝えしました。
↓
https://ide-seikotsuin.com/youtuikotubannrizumu
腰はほとんど動かず、他の背中(胸椎)や股関節が動いてカバーしているのです。
なので腰を痛めやすい人は、腰が動きすぎているのです。
背中、肩甲骨や股関節は動いた方が良いけど、腰回りというのは、固定する方が大事になるのです。
腰痛改善に必要な筋肉は重いものを持ち上げる力ではなく、腰を安定させる固定力になります。
天然のコルセットを作る感じだと思ってください。
そして腰痛やヘルニアがある方は、身体を起こすような腹筋運動などは、椎間板の前に負担がかかかるので行わないということです。
注意事項
足の感覚がない。(痺れと感覚がないは違う)
発熱している。
じっとしていてもかなり痛い。
排尿障害がある。
などはまずは病院に行って検査を受けて下さい。
上記のような症状がなければ整体と身体の使い方、そして正しいエクササイズをおこないましょう。
脊椎の権威、スチュアート・マギル博士の考え
カナダのウォータールー大学名誉教授であり、脊椎機能・リハビリテーションの世界的権威であるスチュアート・マギル博士は
腰痛の根本的な原因に対処できるような考え方として
①単独の筋肉を鍛えるのではなく、連動・強調した状態での複合的な体幹のトレーニングを推奨
②日常生活において必要な力の入れ方はパワーよりも持久力が必要
③体幹トレーニングの前に脊椎の可動性(モビリティ)が重要
柔軟性はただ柔らかいだけですが、可動性は自分で動かしながら安定性と柔軟性がある状態です。
いで整骨院ではこの考えをもとに
まずは脊椎の可動性を上げるために、胸椎や股関節周りの静的動的含めてのストレッチを行います。
・その中で良く院でもお伝えする背中周り(胸椎)のストレッチを挙げておきます。
施術や自宅でのストレッチで可動性が上がったところで、下記の体幹トレーニングをお伝えします。
腰の負荷を最小限にした体幹トレーニング、マギルビッグ3
腰の負担を最小限に抑えつつ、背骨周り体幹の固定力を高めるトレーニング、
先程お伝えしたマギル博士がヘルニアや腰痛改善に推奨する、マギルビック3を紹介します。
①カールアップ
これにより腰を曲げずに前側の筋肉を安全に活性化します。
10秒ホールド
②サイドプランク
これにより腰の負担を減らしつつ、主に横方向のブレを防ぎます。
できそうでしたら通常のプランクも行うとより効果的です。
③バードドッグ
これにより体幹を固定しつつ対角線の手足をコントロールする力を作ります。
手足を上げるのではなく、遠くにピンと引っ張る感覚で行いましょう。
手足を上げると腰が反ってしまいます。
どのエクササイズも目安です。人により状態は違います。
最初は短い時間、回数で始めてください。
時間や回数、やり方がわからない場合はお気軽に来院時やLINEなどで聞いてくださいね。
痛みがあるエクササイズは無理せず、始めるのは先に伸ばしましょう。
慣れてきたら、時間や回数を上げていきましょう。
上記3つともに共通することですが
腹圧、お腹に力を入れる感じが大事です。
少しわかりやすく言うと、ボクシングなどでお腹を殴られるときに力を込めるような感じ。
それが腹圧を入れている状態です。
この腹圧が抜けていると腰を痛めやすくなります。
トレーニング中はこの腹圧が入っているかを確認しながら行ってください。
この3つを行うことで、体幹の固定力を高め、肩甲骨や股関節は自由に動かせるようにしていくと、日常生活もスポーツなどでも腰を痛めずに高いパフォーマンスを発揮できます。
上記のトレーニングなどが簡単にできるようになってきたら、腹筋ローラーなどの体幹を鍛える高負荷のトレーニングも良いでしょう。
いかに可動性と体幹を鍛えることが大事かということがわかって頂けたかと思います。
中心をしっかり固めて肩甲骨や股関節以降の上肢下肢は自由に動かしていくと覚えていてください。
以上が
『ヘルニアは手術しないで治るんですか?』
の返答になります。
その他気になることやわかりづらいことなどありましたら、来院時やLINEにてご質問下さいね。






